留袖の裾に刺繡された「五三の桐」。
「五七の桐」と同じく代表的な紋章のひとつ。
『きもの文様図鑑』より

たいしょ 大暑

 文字どおり、1年でいちばん暑さの厳しく感じられる頃。鰻(うなぎ)で知られる「土用の丑(うし)」もこの期間中にありますし、「暑気払い」と称してのビヤガーデンなどでの集いも、ひときわ賑やかになる時節。

第三十四候 桐始結花 きり はじめて はなを むすぶ

 古来、桐は神聖な木とされてきました。花が開くのは初夏。見たことがないという人も、日本国政府の紋章(五七の桐)や500百円硬貨で意匠化された釣り鐘形の花を目にしたことがあるでしょう。薄紫色の花は、盛夏を迎える頃、卵形の実を結びます。その横では来年咲く花のつぼみが早くもふくらみ始めています。


土用太郎一日熱き茶でとほす
石川桂郎


土用は四季毎にあるが、今は土用といえば夏の土用をさす。七月二十日頃の小暑から約十八日間。一年の最も暑い時期であり、体力を保とうと鰻を食べる習慣も定着している。土用太郎は土用の一日目、土用入のこと。その一日を、冷たいものもとらず、熱い茶で通したというのは、暑い日々に対しての気構えか。この時期の桂郎がすでに病身であったことを思うと、土用を迎えた切実さが伝わってくる。昭和四十八年『高蘆』所収。(押野 裕) 

石川桂郎 いしかわけいろう (一九〇九─七五)

東京芝の生まれ。家業の理髪店を継いだ。昭和九年より俳句を始め、後に「鶴」同人。横光利一につき小説も書いた。「俳句研究」「俳句」編集長。句誌「風土」主宰。



旬のさかな うなぎ 鰻

ふんわりとした食感の関東風蒲焼き photo : ©️️️️ Heibonsha


 高タンパクで消化がよく、ビタミンA、Eなどの栄養も豊富。そのため万葉の時代から薬食いとして知られてきた。土用の丑の日に鰻を食べる風習は蘭学者・平賀源内によって広められたが、こと天然物に関しては寒さに備えて脂がのる秋から冬が旬という。
 蒲焼きなら歯ごたえと香ばしさの関西風か、ふっくらとろける関東風。今や全国区となった愛知県名物ひつまぶしもいいが、さっぱりとした白焼きも捨てがたい。土用を過ぎれば立秋。秋はすぐそこまで来ている。



旬のやさい えだまめ 枝豆

ビールのお供にぴったり photo: Kei Miyajima©️️️️ Heibonsha


 大豆を若いうちに収穫したものが枝豆。そのまま育てると莢が枯れ、黄色く熟した大豆が採れる。栄養学的には野菜と豆の長所を併せもち、大豆にはあまりないビタミンAやCを有す。豊富に含まれるビタミンB1は疲労回復、必須アミノ酸のメチオニンには肝機能を助ける働きがある。
 旧暦九月十三日の十三夜を豆名月ということからわかるように昔の旬は秋だったが、現在ではビールの供として夏の食卓に欠かせない存在だ。だだちゃ豆(山形県)、黒埼茶豆(新潟県)といったブランド豆が人気を集めている。



旬のやさい ピーマン

『草花もの知り事典』より「ピーマン」

 唐辛子の品種のひとつで原産は南米。日本には辛味種の唐辛子が十六世紀以降に伝わったとされる。ビタミンAやCが豊富で、熟すと赤や黄色になりビタミン成分も緑色のときより増える。
 独特の青臭さのもとはピラジン化合物。苦手とする人も多いが、血栓を防ぎ脳梗塞や心筋梗塞の予防に効果がある。かつては人参とともに子どもの嫌いな野菜の代表だったが、品種改良を重ね、ずいぶん食べやすくなった。



季節のたのしみ なつのうすもの 夏の羅


 羅と書いて「うすもの」と読みます。ジョーゼットやオーガンジーなど、透けるような薄布は繊細かつ優美な雰囲気を漂わせ、夏らしい装いに欠かせない素材です。
 和服の世界では、夏は絽や紗、上布などで仕立てた着物を身につけます。絽はよった糸で織られた織物で、糸と糸の間に隙間があり通気性がいいのが特徴です。紗も同様ですが、より軽く薄く全体が透けて見えます。絽は七~八月、紗は八月に着用されます。上布は麻糸を細かくして織り上げた布で、麻特有のパリッとした感触が涼感を伝えます。越後上布や宮古上布が知られています。