photo: Toshihiko Kono © Heibonsha

しょうせつ 小雪

 北風の冷たさが、日々はっきりと感じられるようになります。北国では里にも雪がちらつくことがありますが、まだ本格的な寒さには至りません。ちょっとした雪、の意としての「小雪」です。

第五十八候 虹蔵不見 にじ かくれて みえず


 昼の時間が短くなり、陽射しもめっきりと衰えて、どんよりとした曇りがちの日も多くなります。ねずみ色の空を見上げながら、ふと、虹を見る日もほとんどなくなったと思う、そんな季節感を表しているのが、この言葉。いっぽうで俳句の季語に「冬の虹」という言葉もあるのですが、こちらは、寒々とした雨が上がった晴れ間に、ひょっとめずらしいものに出会った、そんな新鮮さを含む響きを持っています。


こがらしや日に日に鴛鴦のうつくしき
井上士朗


木枯しとは、冬の初めに吹く北風一号。思わず身震いする寒風により冬の到来を知る。「鴛鴦(水鳥)」も冬の季語。「おしどり夫婦」という譬えどおり番で行動する。鳥類の例にもれず雌は地味な体色だが、雄は美麗な羽色を誇る。周りが冬ざれて色を失っていく中で、ますますその色は鮮やかになっていく。水鳥とは鴨・雁・鳰・白鳥・鷗など。冬の水面は彼らの王国だ。冬にこそ美しく感じるものがある。文化元年『枇杷園句集』所収。(望月とし江)

井上士朗 いのうえしろう (一七四二─一八一二)

暁台門。尾張(愛知県)の人。名古屋城下で評判の町医でもあった。国学を本居宣長に学び、絵画・平曲・漢学にも通じた。俗謡をもじって「尾張名古屋は士朗(城)で持つ」とうたわれるほど名声を博した。



旬のさかな ししゃも 柳葉魚


 北海道以北の海に分布するため、古来アイヌ民族にとって大切な食料で、その名も、アイヌ語のスサム(柳の葉)が語源。神様が人間のために柳の木の葉を魚に化してくれた、という伝説にもとづいているとか。十月下旬から十二月上旬が産卵期で、この時期の雌は、大きくふくらんだお腹を持つ子持ちシシャモと呼ばれ、生干し、丸干しなどにして人気の酒肴。



旬のさかな きちじ 喜知次


 魚屋では「キンキン」とか「キンキ」の名で売られる魚。北海道のオホーツク海沿岸から駿河湾にかけて、特に北海道や三陸地方に多い。肉は脂がよくのった白身で、煮つけなどによく合う。煮汁をご飯にかけていただくのもまた家庭料理の醍醐味。昔は値も張らない「総菜魚」などといわれたが、近年になって高級魚の仲間入りをしている。



旬のやさい だいず 大豆

『和漢三才図会』より「大豆」

 米とともに日本の食の二本柱というべき存在。「畑の肉」といわれるほどタンパク質、脂肪、ビタミン類に富んでいる。味噌、醬油、納豆、豆腐の原料に、炒って粉にしたきな粉は菓子に、あらゆる食の場面で大活躍。
 未成熟の大豆を枝ごと収穫したのが枝豆。また、お正月に欠かせぬ黒豆は、皮の色が黒い品種の大豆のこと。東京では味をつけずにやわらかく煮上げただけのものを「みそ豆」と呼び、辛子醬油をからめて朝食の菜にすることが多かった。



季節のたのしみ しんのうさい 神農祭

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 薬の問屋街として知られる大阪・道修町の一角に少彦名神社があります。薬祖神・少彦名命とともに中国の医学の祖・神農氏を祀っていることから「神農さん」と呼ばれ親しまれています。この神社で十一月二十二日、二十三日に行われるのが神農祭です。当日は張り子で作った「神農の虎」が参拝客に与えられますが、これはかつて大阪でコレラが流行した際、薬種仲間が虎の頭の骨を配合した薬を庶民に配ったという出来事にちなんでいます。
 一月の「十日戎」に始まった大阪の祭りも、大がかりなものはこの神農祭が最後。この祭りが終わると、大阪の町はそろそろ師走の雰囲気を呈します。