よられつる 野もせの草の かげろひて涼しく曇る 夕立の空(『新古今和歌集』263・西行法師)

強い風に捩られ、吹き乱れる野一面の草がふと陰って、涼しく曇ってくる夕立前の空。

暑い日が続いておりますが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
私はすっかりばててしまって、ようやく気力を取り戻し始めました。

8月に入り暑さもピーク。外は熱風と湿気で、本当に身の危険を感じます。
ここ最近は温暖化の影響もあり、私の子供の頃よりもますます暑くなってきている気がします。
そして線状降水帯に夜ゲリラ豪雨も増え、土砂災害の被害もひどくなってきています。
私の実家のある千葉県中部も、浸水を伴う被害を被ったこともありました。
気候のバランスの乱れに、「これからどうなってしまうのだろう」「四季がなくなっていってしまう」と憂うこともしばしばですね・・・。

しかし、平安時代〜鎌倉時代にかけては地球的にも温暖な時代であり、当時の人々も暑さに悩まされていたようです。
当時の人も酷暑の表現に「極熱(ゴクネチ)」という言葉を用いるほど。
貴族の住まいである寝殿造は夏の暑さを最優先した風通しのいい構造で、庭の池にせり出した釣殿でさらなる涼を求めました。
兼好法師も『徒然草』の中で「家の作りやうは夏をむねとすべし。冬はいかやうにも住まる(家の構造は夏を基準にすべし。冬はどうにでもなる。)と述べています。
現在の夏のどうしようもない暑さは、平安鎌倉以来の暑さなのかもしれません。

さて、今回の歌は西行法師の、夕立の直前の気象の変化を捉えた和歌。
夕立の直前は高気圧と低気圧がぶつかり合い、急に暗くなって冷たい風が吹く・・・中学校の理科で習ったことが、和歌の中に克明に記されていることに驚かされます。
ああ、これから夕立がくるなというのは、鈍感な現代人にもわかりやすい変化ですよね。
気象の変化を感じ取るセンサーを失いつつある現代人ですが、せめてそういう感覚を持ち続けていたいと思うことしきりです。

夕立の後の夕焼けも、楽しみの一つですね。