七夕のと渡る舟の梶の葉にいく秋書きつ露のたまづさ(『新古今和歌集』藤原定家)
七夕に天の川を渡る舟の舵。その舵ではないけれど梶の葉に、毎年秋が来るたびに何回も露のようにはかない手紙を書いてしまったよ。)

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「露のたまづさ」は露で墨をすって書いた手紙のこと。
いかにも七夕らしい趣向ですが、露は涙の暗喩でもあり成就しない恋を連想させます。
「たまづさ」は「梓」の美称「玉梓(たまあづさ)」が訛ったもので、手紙の美称です。
古代手紙を神を下ろす梓の枝に結びつけて送ったことからの呼び名とか。
カラスウリをタマズサと呼ぶのは、その種子が結び文の形に近いところからの連想です。


立秋のための行事として、現在では特別に行われるものはありません。
しかし旧暦が運用されていた時代には、「七夕」が立秋の頃の行事の代表格でした。

『枕草子』では清少納言が仕える中宮定子が父の服喪期間の方違えのため、その頃御在所としていた職の御曹司(しきのみぞうし:中宮飾事務所)から別の場所に移っていた時のエピソードに七夕祭の情景が登場します。

「秋になりたれど、かたへだに涼しからぬ風の、所からなめり、さすがに虫の声など聞えたり。八日ぞ、帰らせたまひければ、七夕祭、ここにては例よりも近う見ゆるは、ほどの狭ければなめり。」(156段)

(立秋を迎えたけれど、古歌にある「かたへ涼しき風や吹くらむ」の言葉どころではなく、片方も何ももうちっとも涼しくない風で。でも宮中とは違った場所柄かしらね、暑いとは言っても秋の虫の声などが聞こえているわ。定子様は八日に宮中の職の御曹司にお帰りになるので、七夕祭をここでするけれど、いつもよりもその祭壇が近く見えるのは場所が狭いからみたい。)

日付行事の感覚はなかなか当時の人と感覚を共有するのは難しいですが、太陽の運行に則った暦の感覚なら今でも変わらず同じ気持ちで過ごしていることが面白いです。

今年(2021年)の旧暦七夕は8月14日。
立秋から一週間が経とうとしている頃でしょうか。
清少納言も、七夕の日の昼間には「暑い暑い」といいながらお祭りの準備をしたのかもしれません。

今年はあいにく梅雨を思わせる雨雲が日本列島にかかり、旧暦でも織姫彦星の逢瀬を地上から見ることは難しそうです。

本来であればよく晴れた星空の下、ペルセウス座流星群の到来も相まって夕涼みにもってこいの時期なのですが・・・。
また来年のお楽しみになりそうですね。

写真は数日前、雨雲到来の前に観測しに行ったペルセウス座流星群を期待した夜空(笑)
流星の収穫はゼロでした。