客員研究員の鯨本あつこです。
編集者や文章書きが生業ですが、ある日心を惹かれたテーマが「島」だったことから、離島経済新聞社という組織を立ち上げ、統括編集長として活動しています。

それだけに出張先も島が多いのですが(有人島は日本に約420島もあります)、あちこちの島に出掛けられることは、我ながらとても恵まれていると感じています。

たとえば、居を構えている九州を起点に、本社のある東京へ顔を出してあちらこちらの関係先に出掛ける時には、せかせかと電車の出発到着時刻を気にするのに、離島地域へ出掛けている時には、船やら飛行機やらの欠航で1日ばかし思い通りにいかなくても、そんなものだなと思えてしまう。

それが、ものごとに対する構えというなら、東京では電車が予定通りにやって来ることが当たり前だと構えていて、海の向こうにある島ではものごとが予定通りにいかないことも当たり前と構えているからなのか。

日本各地の島々を訪ねていると、その土地その土地で感じる、当たり前の多様さも、日本の面白さではないかなと感じます。

そんなわけで、ここでは先日訪れた瀬戸内海の笠岡諸島で出会った、島の当たり前をおすそわけしたいと思います。
こちらは石積みの港と木造の家々のある真鍋島。仕事を放り出してキミになりたいと思わせてくれる猫たちが待ち受ける港のそばに、バケツに入った花が置かれていました。
飾られているかと思えば、売られているようで、バケツのわきには小銭を入れる缶と、包んで帰ってねといわんばかりの新聞紙。愛すべきおおらかさです。

笠岡諸島は岡山県笠岡市の島々で、7つの有人島があり、北から高島、高島、白石島、北木島、真鍋島、大飛島、小飛島、六島。7島あわせて約1,600人が暮らしています。


いずれも橋が架かっていないので、移動はフェリーや定期船、海上タクシーなど。定期便は本数も時間も限られていますが、海上タクシーという手が使える島々では、想像以上に自由な移動ができたりします(複数人で乗らないと高いのですが......)。


真鍋島から六島に訪れると、夕暮れ時におじちゃんたちがドラム缶を囲んで、お酒を飲んでいました。六島の人口は約60人なので島に居酒屋などはありませんが、おじちゃんたちは毎日17時頃に港に集まってきて、ドラム缶を囲んでいるとのこと。
同行していたスタッフが六島の方々と親しいこともあって、おじちゃんたちには私たちを見るなり「飲むか?」と言い、野外に置かれた冷蔵庫を開けてビールを。

置かれているだけかと思っていた冷蔵庫に電気が通っていたことに驚かされながら、チューハイを1缶いただき、「食べろ」と差し出されたヒラメの刺身をいただきました。


そして終始、マイペースな世間話に花を咲かせるおじちゃんたち。さりげなく置かれていた机の引き出しをガラリと開け、そこからつまみを取り出してきたときには、ドラえもんか?!  とひとり突っ込み。野外にあるだけで、完全に茶の間でした。


おじちゃんたちの日常に心を温めた後、海上タクシーで六島から真鍋島に移動する途中、船のおじちゃんに「窓の外」と言われてみてみると、真っ暗な海を突き進む船の波が青白く光っていました。
光の主は夜光虫。この写真はiPhoneで撮影してばっちり手ブレしていますが、夜光虫の明るさだけで、海上を照らす明かりはありません。


おじちゃんは「もう少し季節が早ければもっと明るいんだけど」と言うけれど、私もスタッフも心ときめく幻想的な風景でした。

秋の夜、こんな光を眺めながら瀬戸内海を航行するのも、おじちゃんにとっては当たり前なのかもしれません。