かへる雁雲ゐはるかになりぬなりまた来む秋も遠しと思ふに(『後拾遺和歌集』赤染衛門)



遠く遠く、帰る雁も雲の向こうに行ってしまったようだ。また巡ってくるとわかっている秋も、今はまだ遠いと思っているのに。


行く春を見送るように、雁を見送る季節です。
作者は遠くへ飛び去る雁との距離を、雁の鳴き声から推定しているようです。
音声推定の助動詞「なり」の存在があることによって、視覚的にも音声的にも世界観が深まるように感じます。
雁の声が遠ざかるのを感じながら詠まれた歌なのかもしれませんね。
確かに、雁の声は大きくて特徴的です。

この後、暑い暑い夏を迎え、涼しさを迎える秋を待ち遠しく思う日々がやってきます。
春が去ると、待ち遠しいのは秋ですね。
「雁」は惜しまれつつ暮れる春とともに去り、そして心待ちの秋を連れてくる鳥なのですね。

さて、季節はまさに初夏の風情を迎えようとしています。
あまりにも早すぎる季節の進みに、花たちも大忙しで春と夏が一緒に来てしまったかのような様相を呈しています。

山吹や卯の花、躑躅は今週から来週が盛りでしょうし、燕子花や藤も気の早い子は既に花を咲かせています。

我が家の橘の木も、蕾を沢山つけて今にも開花しそうな風情です。
「五月待つ花橘の香をかげば。。。」の五月は今の六月ごろ。
旧暦の三月に入ったばかりの今としてはまだまだのはずなのですが・・・。

気をつけておかないと、初夏の花は見頃を過ぎてしまいそうですね。