数日前の梅雨の明けた日、朝は霧がかかっていた。きっと彼らの作品はあらわになっているに違いないと思い散策をする。すると案の定、細かい露の付いた巣の模様がはっきりと見える。

 昔は「はざぎ」(はざ木ともいうがこの辺りの呼び名にした)に使った木の葉の陰にうまい具合に張ってあった。「はざぎ」は新潟市西蒲区夏井のはざぎ(樹木名はトネリコというらしいが、タモギとその木を呼んでいた)が、今でも刈り取った稲を干して越後平野の田園風景を保存しているが、ほかの地区はその木すらほとんどといっていいほどなくなってしまった。DSC_0617[1].jpg 3.04 MB
 やはり、木も違えばクモも違うようだ。これはまだいくらも花を咲かせない高さ4~50センチのバラの木だが、そこに巣を張っているクモを見つけた。タモギの場所とは違う種類ということはよくわかるし巣のかけ方も違うようだ。彼らは好みの虫が寄る場所をわきまえているという事のようなのだろうか。

 観察はこの辺でと切り上げる途中にトンボがさかさまになっている。変だなと思ってみたら、巣にかかった獲物だった。そしてハンターは食事中のもようでスマホを近づけてもちっとも動揺しない。トンボは動かないから絶命しているに違いないが、大物の餌を放してなるものかとの必死さが見て取れた。
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 トンボの幼虫のヤゴは主に赤虫を食べるが時にはメダカやオタマジャクシも食べるようだ。成虫になれば飛んでいる虫などを餌とするようだが、こうしてクモに捕食されることもある。食物連鎖の一過程ではあるけれど、自然の厳しさを目にした。

 はたしてヒトはどうだろう。食物連鎖の頂点にいるからと、のうのうと暮らしていることを否定できない。しかし昨今、生物とも言い切れないウイルスに怯えながら生活をしている現実を見ると、自然の中の一生物でしかないとの認識をせざるを得ないではないか。

 その昼、いよいよ梅雨が明けたとニュースがあった。夏本番かと空を見ると、むくむくと湧き上がる夏のクモだ。つまらないダジャレというわけじゃないが、朝のどんよりした空とは違う景色に目を奪われた。その日はすでに車の社外温度計は30度を超えていた。
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 さて夏本番の今日の早朝、トウモロコシを収穫に行こうと妻に誘われて出かけた。その場所は妻の実家にある。この家にもあるのに、なぜ? 実は我が家の周辺には狸が出るから作物が狙われて、特にトウモロコシは全滅の被害にあうことが多くて、どこの家でも家庭菜園の品目から除外の憂き目にあっている。

 しかし、妻の実家のそこは大きな道路に面していて、夜も交通量があるから狸はなかなか近寄らないらしい。

「どれを取るんだよ、実が入っているかどうかわからないよ」
「ちっとも手伝わないから何も知らないのね。一番上の方から取ればいいのよ。もうそのくらいなら食べれるわ、触ってみて硬ければね」DSC_0634[1].jpg 3.42 MB
「何本くらいあるんだよ」
「今実るトウモロコシの木は70本よ」
「じゃ、ほとんど実っているから70個もあるの! どうするんだよそんなに」
「狸に取られるかと思って余計に植えたのよ。それくらいみんなに配るわよ!」
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 用心して張った狸除けのせいか、それとも車の騒音に怯えるためか、狸が食わないのはよかったけれど、どうするのかねぇこれから。まだ下に実が2~3個はついているようだ。

 結局65本あったみたい。これから毎日トウモロコシが朝晩テーブルの上に出てくるのか……。
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「ねぇ、あなたの藍はどうなったか見ているの?」
「いや……」
「ちっとも行ってないじゃない! 見に行こうよ、一緒に」

 先月の初めに少し草を取った程度で、まったく管理は出来ていなかった。彼女はたまに大きな草を取っていたらしい。この書面を借りて感謝をしよう。もちろん本人にはそのうちにちゃんと言おう。

 藍はすっかり大きくなっいる、背丈が50センチはあるようだから刈り取りしてもいいようだ。しかし、これが藍と言っても染料はとれるのだろうかと疑問が浮かぶ。
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 中に枯れた葉があって青く染まっている。どうもこれがインディゴのようだ。ちゃんと藍色のような気がする。DSC_0640[1].jpg 3.72 MB
 それじゃ、明日当たりか。梅雨も明けたし収穫にはちょうどいいようだ。

「明日、刈り取ろうか! ねぇ……」
「あなた一人でやってね、私は友達と出かけるって言っていたじゃない」
「え! 俺だけで……」

 藍は、いや愛は常に一方通行に違いない。そして見返りを求めてはいけないというセオリー通りなのだ。

 かくなる上は、愛を藍色にどうしても染めてみたい。初めての経験に躊躇は付き物だけれど、一歩踏み出す勇気さえ出せば、その藍色はきっと叶えてくれるに違いない。そう信じて進もう。

   おしまい。