積雪は相当深くなったね。四十センチの長靴がすっかりもぐってしまうんだから、きっと五十センチは積もっているに違いないね、そうこなくっちゃぁ冬じゃない。
だからようやくそのコントラストの美を君は見せてくれたのに違いないのだね。
そうだ、天然色の君をぼくは知っているけれど、それを皆に披露してあげたらたらどうだね?

踏みしめると「カサッ」という彼らの声を聴かせるためにね。
その落ち葉たちを鮮やかに見せてくれたあの芝生はどうなったのって?

ほぉ、白というよりも青く鮮やかな色だねと君は言うのかい? そういえば、ぼくも知っているよ、その色の訳をね。積もりたての雪は青いのさ。
きっと雪雲の上の青空をもらったからだと思うよ。青い空がまれにしか見られないこの時期にその空を抱いて、雪たちは積もってくれたのに違いないんだ。
ぼくにはちゃんと見えるのさ、青い雪の下がさぁ。ほら、君のくれた絨毯がね。

そうだ、二か月前の「徒然なるままに―立冬」のカマキリ君の卵はどうなっているのかなぁ。
「そんなに降るのかい? ずいぶん高いところに産み付けるなんて用心深いんだなぁ」なんてさ。
あれから他にもあるかなと庭の木々を探してみたというこの家の奥さんが話すにはね、垣根に三個も同じように並んで目の高さにあったよと教えてくれたから、カマキリくんたちの積雪の深さを予想する力には脱帽だよ。本当に失言だった、ごめんね。

冬囲いのおかげで椿の葉の中に隠していたものをあらわにしてしまったぼくだけど、その卵はちっとも雪なんか、かかっちゃいなかった。それを見て本当に安心したんだよ。
確かめに行く途中で、深い雪に埋もれてしまう長靴の中に思いっきり雪が入ってしまったけれども、そんなものは平気だった。
―雪は「キュッ」と鳴いては、歩くぼくを楽しませたんだからさ―
そんな風に雪中の散策を楽しんでいるぼくを君は見ていたんだね、欅くん。話しかけた君の声が聞こえたよ。
「あと二か月もすれば、きっと春の香りがやって来るから……」
その証拠だというように、小さな芽をふくらませている枝を揺らして見せてくれた時だったよね。
君はそっとぼくに、そう耳打ちをしてくれたんだ。
