こんにちは。暑いのと寒いのだったらどちらが苦手?と聞かれれば、間違いなく、寒いのが苦手な木下着物研究所の木下勝博です。

気づけば師走も中頃となり、二十四節気では大雪。今年は日によってだいぶ暖かい日もありますが、着実の寒い日は増えて来ています。先週は横浜で初雪を観測したとのニュースも聞きました。
<大小霰(だいしょうあられ)文様の着物(江戸小紋)>


さて、今日は伝統的な文様の中で雪の文様について取り上げさせて頂きたいと思います。

起源は諸説ありますが、雪の文様は桃山時代の小袖や能装束でも見られます。雪は五穀の精として、その年が豊作になる吉祥の象徴だと考えられてきました。

<部分使いの雪輪(ゆきわ)で松の上に積もった雪を表現した友禅染>

雪をモチーフにした文様も様々ですが、その中でも年代を問わず人気があるのは「雪輪(ゆきわ)」だと思います。

<雪輪の中に疋田(ひった)絞りの柄を織り込んだ西陣織>


雪輪はその名の通り雪が輪っか状に表現された吉祥を表す文様の一つです。これは雪の文様の中でも比較的新しい文様で近代になってからの意匠と言われています。

<雪輪の中には松や青海波、七宝や楓など様々な文様>


雪輪というと、冬にしか使えないモチーフなのでは?と思う方も多いかも知れませんが、冒頭ご説明させて頂いたように吉祥文様として通年使えるモチーフです。

雪輪をあしらった文様は様々あり、礼装の着物や帯などに多用されていますが、浴衣の柄としても好まれています。
夏の浴衣に雪輪を使って涼を感じるというのも、日本人らしい表現かも知れません。


雪輪をよくご覧頂くと、小さなくぼみが六つあり、輪でありながら六角形をも表現しています。実際に雪の結晶は六角形です。雪輪は別名「六花(りっか)」とも言います。
<雪華紋(せっかもん)と大小霰>

雪の結晶が六角形だということが伝わったのは江戸時代後期。その頃には結晶をデザインした雪華文(せっかもん)が大流行するのですが、それ以前の雪輪文様も六角形を含んでいることは何とも不思議です。


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冷暖房完備や医療も整っている現代とは異なり、梅雨時期や夏、そして厳しい冬とそれぞれの季節を家族が無事に過ごすということは、昔の日本人にとってはとても重要なこと。つまり、常に季節の変化に衣食住を合わせて行くことが日本人のライフスタイルの根幹にあったのでしょう。

その中で自然に対する畏敬の念と共に、吉祥や長寿、子孫繁栄を願う様々な文様を身につけることは、信仰に近い感覚で現代人のファッションに対する感覚とはだいぶ異なります。


現代の私たちも着物を着たり、伝統的なものと日常的に触れ合うことにより、先人たちが何を大切にしてきたのかを追体験できるのではないでしょうか。