夏と秋と行きかふ空の通ひ路はかたへ涼しき風や吹くらむ(『古今和歌集』凡河内躬恒)

夏と秋が交錯する空の上の通い路では、暑い風が吹く一方で今は涼しい秋風が吹いているのだろう。
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立秋を迎えたもののまだまだ暑い日差しにぐったりしてしまうのは毎年のこと・・・というよりも平安の昔から続いてきたことのようですね。
立秋は地上の体感温度で決まるのではなく、太陽の運行で定められたものなので今も昔も暑い盛りが立秋の日でした。

立秋の頃、友人の車で長野方面を訪れました。
諏訪湖上空の空がまさにこの歌の風情を思わせる空で、湖面を吹き抜ける風の涼しさに秋を見つけたくなりました。
もちろんうだるような暑さだったのですが、暦は人間の感覚ではなく、天の運行によって定められていることに改めて感動してしまう自分がいたりします。

まだまだ実感はありませんが、実は日も随分短くなり始めているのですよね。
暑い日々が続くので、そのことばかりにとらわれてしまうと季節が少しずつ変化しているのを見逃してしまいそうです。

今回の凡河内躬恒の歌は、遠い空の上であたかも夏と秋がバトンタッチしつつある様子を捉えた歌で、立秋にはもう外せない名歌です。
暑くて仕方がない地上の風の一方で、空の上では冷たい風が吹き始めている。
冷涼な秋を楽しみに思いをはせる気持ちに共感してしまいます。

前回は夕立の歌の紹介でしたが、夕立も空の上で暑い風と冷たい風がぶつかり合って発生するもの。
こういう季節の変わり目のせめぎ合いの頃ならではの歌ですね。
もう、西行も凡河内躬恒も天気図が見えているのではないのかと思われるほどの観察眼です。

今年は長い雨雲がすっぽりと日本列島をおおってしまって、あたかも梅雨時のような様相を呈しています。
でもこの長雨が明けた後にどんな空模様が待っているのか、少し心待ちにしている自分がいます。

暑い中にも、少し秋の風を感じられるお天気を味わいたいですね。